大阪高等裁判所 昭和46年(ネ)1194号・昭45年(ネ)1789号 判決
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〔判決理由〕控訴人らは過失相殺を主張するので、被控訴人にも過失があつたかどうかについて判断するに、<証拠>を綜合すると、本件事故現場は、歩車道の区別があり、車道の幅員一〇米余りの東西に通じる舗装道路上の横断歩道であつて、路面に白色で横断歩道の表示が施されていたこと、右横断歩道の西方には信号機による交通整理の行われている交差点があるが、右横断歩道とは約五〇米も隔たつていて、その信号機は、右横断歩道の交通整理を行なうために設けられたものではなく、右横断歩道自体は交通整理が行われていなかつたこと、控訴人鍬田は西から東に向い右交差点に差しかかつたとき、前方の信号機が赤のため、交差点の直前で停止し(先頭車)、信号が青に変つたので発進して交差点を直進し、事故現場に向い、時速約二〇粁の速度で接近して行つたこと、被控訴人は、右横断歩道を北から南に向つて横断すべく、予め西方を確認して被告車が接近してくるのを認めたが、なお距離がはなれていると思われたのと、小雨の中で傘がなく、急いでもいたため、急いで渡れば安全に横断できるものと判断し、右手を挙げ、会釈をして、小走りに横断をはじめたが、車道の北端から約4.2米の地点で被告車と接触したこと、一方、控訴人鍬田は、冬の夕方で周囲はすでにかなり暗くなつており、附近に街灯もなかつたうえ、小雨と霧のために見とおしの悪い状況にあつたのであるから、前方を確認できる範囲に応じた安全な速度で進行するとともに、前方を十分に注視し、歩行者が横断歩道により道路の左側部分を横断し、または横断しようとしているときは、横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない注意義務があるのに、前方の注視、確認を怠つていたため、すでに前記横断歩道を車道の左端から約3.8米の地点まで横断してきていた被控訴人を、前方約三米の至近距離に接近してはじめて発見し、直ちに急制動の措置をとつたが、雨水によるスリップもあつて、及ばず、被告車の右バックミラーを被控訴人に接触させたこと、以上の事実が認められ、<証拠>は信用できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。右認定の事実によると、本件事故の原因の殆んど大部分は、控訴人鍬田の前方不注視、不確認の過失にあるというべきであるけれども、被告車との距離関係から安全に横断できると考えた被控訴人の判断が結果的に誤りであつたことは、本件事故が発生したこと自体から明らかであり(被告車は時速二〇粁で進行していたもので、被告車に制限速度違反はない)、横断歩道上を、右手を挙げ、会釈をして横断しはじめたとはいえ、小雨の降る夕闇の中で、被告車を運転していた控訴人鍬田が、直ちに、被控訴人の横断行為と合図を認めて、減速等の措置をとるかどうか(この措置をとらなければ、距離および速度の関係から接触することになる)を確認することもなしに、しかも小走りで横断し、自ら被告車の進路内に立ち入るという危険を伴なう行動をとつた点において、被控訴人にも過失があり、その過失もまた本件事故の原因の一端をなしたものというべく、その過失の割合は、控訴人鍬田が九割、被控訴人が一割と認めるのが相当である。
(宮川種一郎 林繁 平田浩)